紛争

Wish you were here. -核禁条約と唯一の戦争被爆国・日本

 「あなたにここにいてほしい」。2017年3月、ニューヨークの国連本部で開かれた核兵器禁止条約(核禁条約)交渉会議の最終日、空席の日本政府代表部の机上に置かれた折り鶴に書かれた言葉です。なんたる重み。

 核禁条約は2017年7月、122カ国の賛成で採択され、9月20日から署名が開始されました。すでに53カ国が署名を済ませ、2018年中の発効が見込まれます。日本は核兵器保有国や「核の傘」のもとにある諸国とともに加入しない方針です。

 戦後一貫して核兵器の非人道性と「核なき世界」の実現を世界に訴えてきた唯一の戦争被爆国・日本。この矛盾をどうしたら説明できるのでしょう。

 米国の原爆投下の犠牲となった広島・長崎の被爆者の方々は、いつの間にか、人類の敵、非人道的な大量破壊兵器の犠牲者として「ヒロシマ・ナガサキのヒバクシャ」に書き換えられ、その対価のように、日本は原爆投下国の「核の傘」のもと、平和と、軍事費の軽減、そして「原子力の平和利用」による経済発展と快適な生活とを享受してきました。

 その当然の帰結というべきか、歴史的な核禁条約成立を前に、日本政府は「アプローチが違う」「保有国と非保有国の隔たりを深め、核兵器のない世界の実現を遠ざける」として交渉に参加さえしませんでした。

 多少ぎくしゃくしても、日本の条約加入が日米関係に影を落とすことはない、本気になればやれたはずという識者の指摘があります。自戒を込めて言います。安倍さんや日本政府を本気にさせなかったのは、私たち国民の関心の低さではないかと。

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