(会長をしている難民を助ける会のホームページに2022年3月11日に公開したものです。)
東日本大震災の発生から11年目のこの日が巡ってきました。改めまして、犠牲になられた方々やご家族に思いを馳せ、被災された方々にお見舞いを申し上げます。私たち難民を助ける会は今後も、地元自治体や住民の皆さんとともに、東北3県の福祉施設の方々、福島県の子供たちへの支援を中心に復興支援活動に取り組んでまいります。
3月は、また同じ11年前の3月に始まったシリア危機に思いを馳せる時でもあるはずです。しかし、現在、私たちが目にする報道は、当然のことながら目を覆いたくなるウクライナからのニュースで覆い尽くされています。
そんな中で伝えられる心強いニュースは、隣国を中心に、ウクライナから逃れる人々に対し市民の輪が広がり続けていること、各国政府が団結し、ウクライナ支援を表明していること、多くの企業が直接、間接に難民に対する財政支援を表明し、あるいは既に実施していることです。
こうした動きを積極的に歓迎する一方で、すべての支援がウクライナに集中し、先のシリアやアフガニスタン、そして南スーダンやエチオピア、そしてコロナ禍にあっていまだ1回目の予防接種さえ受けられない人々に対する支援が忘れ去られてしまうのではないか、そんな危機感も覚えます。ウクライナ危機が深刻化する今だからこそ、私たち日本人の人道が試される時であるように思います。
もちろん、今回のロシアによるウクライナへの侵攻は、近年私たちが目にしてきたいかなる紛争とも異なります。明らかな国連憲章、国際人道法違反であり、第2次世界大戦後、世界が積み上げてきた国際秩序の破壊行為で、到底許されるものではありません。
他方で、ロシアに侵略されたウクライナ人に対しては何としても手を差し伸べなければならないとやむにやまれぬ思いを抱く一方で、内戦によるアフガニスタンや南スーダン、シリアの難民は自業自得だから仕方がない、私たちには関係ない、という論理が許されてしまったら・・・。それはウクライナの方々に向けられた支援が、人道的動機からではなく、政治的な動機や判断によるものであると宣言するようなものではないでしょうか。ウクライナへの支援が他の人道的危機にある国や人々への支援と引き換えに行われてしまったら、ウクライナ戦争が収まった時に、世界はまた別の深刻な危機に、新たな紛争やテロに直面する事態に陥りかねません。
日本政府はこれまで難民支援に消極的でしたが、ウクライナからの避難者(まずは日本に住む人の親族や知人)については積極的に受け入れる方針を示しています。今回の動きが、ロシアに侵攻されたウクライナ難民に限定されることなく、それぞれの国や地域の理由で自国で生活をすることが叶わなくなった人々に対し、日本が門戸を開く、きっかけとなることを強く願います。
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