紛争

国連憲章2条4項と無法者の住む世界 -安倍さん任せではなく

 新学期になりました。ある講義では毎年、国連憲章を仔細に検討することから始めます。

 国連憲章2条4項。度重なる大戦の末、国際社会がたどりついた武力紛争の違法化の到達点ともいわれる重要文書です。

 しか条文には世界政府のない不安定な国際社会の実態が如実に表れています。

 「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」
「慎む」の英語正文は「shall refrain」。

 「車内での携帯電話のご使用や、喫煙はご遠慮ください」と同じ、あまりに弱い、ささやかな動詞です。

 さらに紛争の違法化には内戦、安全保障理事会による強制行動、その授権による武力の行使、個別的・集団的自衛権の行使といった例外が用意されています。加えて、非常に議論の分かれる微妙なところですが「人道的介入」があります。

 今、私たちの近くで緊張が高まっています。しかし戦後の70年間、日本が巻き込まれなかっただけで、世界では、毎日どこかで戦争や紛争が行われ、数多くの市民が犠牲となってきました。

 無法者が幅をきかせるだけでなく、法を作った側でも紛争の原因を作り出す「政府なき世界」でどう生きていくのか。

 自国の安全を確保するためなら何をしても、あるいは何を見過ごしても許されるのか、国を守るために、どこまでの犠牲を許容するのか。守るべき国とは何か。正解のない問いが続きます。他人事ではなくすべて自分事です。

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