紛争

トランプ大統領の400分の1

 トランプ米大統領が自国へのシリア難民などの受け入れを凍結し、さらに中東・アフリカ7カ国の国民の入国を一時停止する大統領令を発令しました。米国各地の国際空港で混乱が起き、全米で多様性の容認を訴える大規模な抗議デモが続いています。

 こうしたニュースに接し、難民問題にかかわる人間としては、きわめて複雑な、いたたまれなさを感じています。

 トランプ大統領の政策は受け入れ難いものです。しかしこの政策に、正面から異議を唱えられるのは、米国民と、難民や移民を多数受け入れている国の政府や国民、メディアだけではないでしょうか。

 大統領令により、シリア難民の受け入れは国益に合致すると判断するまで、それ以外の難民の受け入れも120日間停止されます。また、2017年の会計年度中の難民受け入れを、オバマ前政権の目標の半数以下とする方針も発表されました。

 半数とは「5万人以下」を指します。極端な削減ですが、これでも日本の2015年の難民受け入れ実績125人(難民および人道上の配慮による在留特別許可数)の実に400倍。単純な数字の比較は無意味と理解しつつも、日本が、あのトランプ大統領の400分の1の難民しか受け入れていないことに衝撃を感じます。

 米国と日本のどちらが特殊な国でしょうか。私たちの国が普通であるのなら、普通になろうとしている米国に異を唱え、トランプ政権は異常だと糾弾できるでしょうか。国連難民高等弁務官は向こう120日間に、難民2万人が行き場を失うと警鐘を鳴らしています。

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