戦後70年の夏が終わり、秋がやってきました。夏に戦争を考えることは日本の夏の風物詩と捉える向きもあるかもしれません。しかし今年の夏は70年という節目の年。安保法制もあり、いつもの夏とは明らかに異なる熱気と切迫感、緊張感をもって「戦争」が語られ、振り返られたように思います。
私も関連するシンポジウムやテレビ番組に出演したり書いたりと70年を意識し続けた上半期でした。そうした試みの一つとして8月下旬、晩夏の立教大学に脚本家・渡辺あやさんをお招きし、2011年秋のNHK連続テレビ小説「カーネーション」を題材に、「普通の人」にとっての戦争を考える講演会を企画しました。
「カーネーション」は大正から平成にかけての大阪・岸和田が舞台。デザイナ―小篠3姉妹の母・綾子さんの92年の生涯をモデルにしたもので、決して戦争そのものがテーマではありません。しかし日中戦争・太平洋戦争と男たちの出征・戦死、心を病む人々、空襲、原爆、戦災孤児、「パンパン」となった幼なじみの姿、耐乏生活などを通じ、戦中・戦後の混乱期を生きる人々の様子、戦争の加害と被害など、「普通の人」にとっての戦争が印象的に描かれました。
この作品と講演会を通じて触発され感じたのは、私たちには責任があるということ。それは私たち一人一人がそれぞれの持ち場で、自分の言葉、自分の「文体」で、戦後70年の平和を語り、作りだしていく責任です。「平和を守れ」「戦争反対」という言葉を超えて。