日本

「通貨」と「平和」は絶対か

 インドに行っていました。折しも2016年11月上旬、偽札・不正蓄財対策として、流通紙幣の9割に該当するとされる最高額の1000ルピー(約1700円)札と2番目に高額な500ルピー(約850円)札を一夜にして廃止するという、モディ首相の突然の通達が出された直後でした。

 新たに新2000ルピー札、新500ルピー札が発行されたものの、市場への供給が追いつかず、また、交換できるのは銀行に預けてある資金のみという限定つきのため、インド経済は大混乱でした。私も空港で5000円ほど両替しましたが、渡されたのは2000ルピー札1枚に100ルピー札少々と少額紙幣。

 店頭で2000ルピー札を見せてもお釣りの紙幣がないとのことで大変往生しました。短期滞在の外国人でさえこれです。市民の混乱ぶりは容易に想像がつきます。

 インドでは銀行に預金する人はごくわずか、多くの国民が家に蓄財し、実業家や政治家、政党の出所不明の収入や献金など、不正蓄財の温床になっているとされます。また、不正に流通している資金がテロリストに流れているとのうわさもあり、紙幣交換は大きな痛みを伴うものの、歓迎する声も一部にありました。

 日本人が絶対と考えているものに、「通貨(円)」と「平和」があるように思います。物価の変動で、多少目減りすることはあっても、円を支える政治経済構造そのものの崩壊というのは、私たちには想像しがたいことです。この両者がどれほど脆いものなのか。今、最も身をもって知っているのはシリアの人々であるように思います。

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