紛争

シリア難民と教育 -「失われた世代」をつくらないために

 世界人道サミット(2016年5月23-24日)およびG7伊勢志摩サミット(同5月26-27日)に際して、日本政府は5年間で最大150人のシリア人留学生の受け入れを表明しました。不十分という声もありますが、この具体的な取り組みを歓迎したいと思います。難民問題と教育は切っても切り離せない関係にあります。子どもの教育は難民として国外に逃れる要因にも、難民が国に帰還する動機にも、両方に働くからです。

 祖国では多くの学校が破壊され、あるいは閉鎖されていました。難民となって逃れた隣国のトルコやヨルダン、レバノンでも、高等教育はおろか初等教育さえままならないとしたら、将来シリアで和平が成立したとしても、国を背負う若者がいないことになります。

 シリア危機の発生以来、ほとんど学校に通うことができず、母語も避難先の言語も、ともに読み書きのできないシリア人の子どもたちが大勢います。まさに一つの世代が「失われた世代」になろうとしています。そんな中で打ち出された留学生の支援は、「難民としてではなく留学生として学びたい」という声に応え、将来のシリアの復興を担う人材を育成する観点からも大きな意味ある支援です。

 日本政府がそれ以上の数の受け入れを表明できないのは、政府、というより、私たち国民に受け入れの素地がない、という判断かもしれません。国境を接する隣国とはいえ、トルコでは、人口の3%に上る270万人を受け入れています。この留学生受け入れのニュースを歓迎するとともに、トルコとの大きな開きも肝に銘じておきたいと思います。

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