紛争

スレブレニツァから20年 -2015年7月に

 戦後70年の今年、年明けから「70」の文字と頻繁に対峙しているように思います。アウシュビッツ解放から70年、東京大空襲から70年、沖縄戦の終結から70年。そしてもうすぐ70回目の8月15日がやってきます。

 70という重い数字の前に忘れられそうですが、昨年来の二つの20にも触れさせてください。昨2014年は、アフリカ東部の小国ルワンダで、フツ族の強硬派が、同じフツ族の穏健派とツチ族の住民約80万人をたった100日間で抹殺したルワンダ・ジェノサイドから20年でした。そして2015年は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の末期、ボスニア東部の小都市スレブレニツァで、セルビア人武装勢力がイスラム教徒の男性約6000人を殺害したスレブレニツァ・ジェノサイドから20年に当たります。

 当時、私は「難民を助ける会」(AAR)の駐在員として現地におり、虐殺の首謀者とされるムラジッチ将軍やその家族と面識がありました。のちに博士論文でこの事件を扱い、繰り返し衝撃を受けたのが、加害者たちがごくごく普通の人だったことです。それは私たちの誰もが、こうした事件の当事者になる可能性を示していました。

 戦争は恐ろしいものです。誰もが被害者になるからだけではなく、平時であれば、平凡に、まっとうに生きることができたはずの人々を、凶悪な加害者に追い込む何かを持っているからです。だからこそ、70年の節目の今年、武力の行使の仕方をめぐって議論を戦わすのではなく、武力によらない平和を模索することにこそ知恵を結集すべきだと思うのです。

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