紛争

テロには屈しない子どもたち -イクバル・マシー君の命日に

 はじめまして。長有紀枝です。私は大学教員として国際関係やジェノサイド予防、ホロコースト、国際人道法、人間の安全保障といった分野を教える傍ら、国際協力NGO難民を助ける会(AAR)の理事長を務めています。いわば二束のわらじをはいているわけですが、このコラムも研究と実務の間を行き来する者として、書かせていただきます。
さて4月も下旬となり新緑のまぶしい季節。入学式や新学期、そしてもうすぐ子どもの日と「子ども」の字が紙面にも多く登場する時期です。日本でも子どもの貧困が深刻な社会問題となっていますが、目を世界に転じると、日本とは異なる次元の厳しさに戦慄を覚えます。

 4月16日はパキスタンの少年イクバル・マシー君の命日。4歳から絨毬工場で働かされた少年は10歳で解放されると、自分と同じ境遇にいる子どものために児童労働に反対する声をあげます。しかし2年後、いとこと自転車に乗っている時、何者かに銃撃され命を落とします。12歳でした。テロとの戦いが注目されていますが、世界の子どもたちは、9・11のずっと以前から様々な脅威とたたかっています。そして今も。

 2014年に最年少でノーベル平和賞を受賞した少女マララ・ユスフザイさんとイクバル君を描いた絵本『マララとイクバル パキスタンのゆうかんな子どもたち』(ジャネット・ウィンター作、道傳愛子訳、岩崎書店、2015年)が刊行されました。ここにインドの詩人タゴールの詩が紹介されています。
「危険から守り給えと祈るのではなく おそれることなく立ち向かう勇気を」。

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