おわりに

 最後となったが、締めくくりに、再びピクテの『赤十字の諸原則』から「独立」の項を引用して終わりたい。

「『政治、信仰、並に経済からの独立』これが旧い『基本的諸原則の要約』のなかにある明示的な、そして要するに結構ないい表し方である。

 独立が必要だという理由は極めて明白であって、長く説明を要しないほどである。赤十字は、自分で自分の意思を決定し、行動し、発言出来るのでなければ、自分自身でなくなってしまう。

 博愛と正義の道をよりよく示すためには、赤十字は現存権力との或る種の繋りを断たねばならない。赤十字は、その純人道的な職務に従うことが自由であり、その固有の原則を常に適用することが自由であり、人に対し平等に振舞うことが自由であり、そして世界的基盤に留ることが自由であらねばならない。

 如何なる勢力と雖も、赤十字を、その理想のみが描きうる不動の線から外らせるよう試みることを許すことはできない。この独立は中立の保障でもある。

(略)

 独立が第一に現われて来なければならないのは、いう迄もなく、国内的及び国際的政治の分野においてである。中立が、赤十字機構に対し、すべての国内的又は国際的政治問題に介入することを禁止していることについては、すでに述べた。その代わり、独立を維持してゆくためには、赤十字機構は断乎として、その固有の分野に政治的勢力の侵入してくる道を封じておかねばならない。」(注)

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