【注】、参考文献

【注】
1 いつの頃からか、旧ユーゴ紛争の戦犯や紛争後のいわゆる移行期の社会、戦犯法廷の判決の行方を追うことは、映し鏡のように、戦後の日本の姿を重ね合わせ、あとをたどる作業にもなった。ボスニア紛争終結から二十余年。日本でいえば昭和四〇年代後半にあたろう。国際的性格を帯びたとはいえ内戦と、国家間の戦争を同じ土俵で議論はできない。戦後七〇年が過ぎてなお戦後処理の終わらない日中韓の関係をみるなら、たった二〇年しかたっていないボスニアの三民族が分断の中にいることは何ら不思議ではないのかもしれない。
2 イスラム武装勢力からの挑発行動が多かった点は当時から再三指摘されていた。不利な紛争を有利に進めるため、また国際社会の注目と同情・関心を引くため、あるいは、ある土地の支配の正当性を確保するため、ボスニア政府側が、住民を安全な地域へ避難させることを拒んだり、自軍の民間人を犠牲にするような戦術・戦略をとっていたという証言もある(多谷75頁)。  

【参考文献】

  • 稲角光恵「旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)の閉廷計画と国家への事件委託」金沢大学『金沢法学』第五一巻第一号、二〇〇八年
  • 佐原徹哉『ボスニア内戦―グローバリゼーションとカオスの民族化』有志舎、二〇〇八年
    柴宜弘『ユーゴスラヴィア現代史』岩波書店、一九九六年
  • 高木徹『ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争』講談社、二〇〇二年
  • 竹村仁美「国際刑事法におけるJCE(Joint Criminal Enterprise)の概念(1)(2)」『一橋法学』六(二)、六(三)、二〇〇七年
  • 多谷千香子『戦争犯罪と法』岩波書店、二〇〇六年
  • 城山英明、石田勇治、遠藤乾編『紛争現場からの平和構築―国際刑事司法の役割と課題』東信堂、二〇〇七年
  • 藤原広人「国際刑事司法過程と平和構築―紛争後社会の集合的記憶形成を手がかりとして」、城山、石田、遠藤編前掲書所収
  • 古谷修一「国際刑事裁判権の意義と問題―国際法秩序における革新性と連続性」、村瀬信也・洪恵子共編『国際刑事裁判所―最も重大な国際裁判を裁く』東信堂、二〇〇八年
  • 望月康恵「移行期正義における国際的な刑事裁判所の役割―目的と機能の乖離」関西学院大学『法と政治』二〇〇八年
  • イヴォ・アンドリッチ著、田中一生・山崎洋共訳『サラエボの鐘』恒文社、一九九七年
  • ピーター・ブロック著、田辺希久子訳、柴宜弘解説『戦争報道 メディアの大罪―ユーゴ内戦でジャーナリストは何をしなかったのか』ダイヤモンド社、二〇〇九年
  • 長有紀枝『スレブレニツァ―あるジェノサイドをめぐる考察』東信堂、二〇〇九年
  • Schabas, William A. The UN International Criminal Tribunals :The Former Yugoslavia, Rwanda and Sierra Leone, Cambridge University Press, 2006
  • Stover, Eric, The Witnesses: War Crimes and the Promise of Justice in the Hague, Pennsylvania Studies in Human Rights, 2007
  • ICTYホームページ、History, Key Figures of Casesほかhttp://www.icty.org/
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