1.人道支援の基本となった赤十字の活動原則

 赤十字国際委員会(ICRC)の創立以来、その活動の歴史とともに培われてきた赤十字の基本原則を、改めて、そして初めて系統立てて体系的にまとめたのは国際法学者であり、後のICRC副委員長ジャン・ピクテ(Jean Pictet)(注)である。
当時、法律問題を取扱う総務部の部長であったピクテは『国際赤十字雑誌』1955年8月号から1年、12回にわたり「赤十字の諸原則」と題するフランス語の論文を連載した(注)

 この論文は後に1冊の本としてICRCより発行され、7つの基本的諸原則と10の機構的諸原則とが示された。これらは1965年にウィーンで開催された第20回赤十字国際会議において整理され、人道・公平・中立・独立・奉仕・単一・世界性の7つの基本原則として決議・宣言された。

 さらに1986年ジュネーブで開催された第25回赤十字国際会議において修正され、現在、「赤十字・赤新月運動基本原則宣言」として公開されている。

 本稿が主題とする独立原則とはこの7原則の一つである。

 ピクテは『赤十字の諸原則』の「独立」の章の冒頭で、「赤十字ハ、アラユル権力カラ独立シテオリ、如何ナル勢力ニ依ツテモ影響サレテハナラナイ」とした。(注)

 赤十字の基本原則宣言においては、「赤十字・赤新月は独立である。各国の赤十字社、赤新月社は、その国の政府の人道的事業の補助者であり、その国の法律に従うが、常に赤十字・赤新月の諸原則にしたがって行動できるよう、その自主性を保たなければならない」と記されている。(注)

(1)赤十字とNGOの活動のための行動規範

(2) 国連総会決議46/182(A/RES/46/182)及び58/114(A/RES/58/114)

(3) グッド・ヒューマニタリアン・ドナーシップ(GHD)における独立概念

(4) 日本政府による独立原則

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