紛争

「駆けつけ警護」に思うこと

 あまりに衝撃的なドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利の報にかき消された感がありますが、南スーダンで平和維持活動(PKO)に従事する国連南スーダン派遣団(UNMISS)に参加していたケニア軍の撤退が発表されました。

 多くの犠牲者が出た今年(2016)7月の政府軍と前副大統領派との武力衝突。現地の女性とともに外国人の援助関係者も、政府軍兵士からレイプの被害にあうという信じ難い事件も発生しました。近くに展開中のPKO部隊に助けを求めたにもかかわらず、部隊は何ら行動を起こさなかったとされています。

 国連事務総長は、UNMISSが適切な行動を起こさず市民の保護に失敗したとの報告書を発表、ケニア人司令官を解任しました。撤退はそれに対するケニア政府の抗議です。

 日本では南スーダン派遣中の自衛隊に「駆けつけ警護」任務を付与する閣議決定を巡り、論戦が展開されました。

 しかし、そもそもの理念や議論が置き去りにされたように思えてなりません。

 PKO参加5原則があるとはいえ、遠い、直接利害関係のない国々で起きた無辜の市民を巻き込む民族・部族紛争に、日本は国際社会の一員として、どこまでリスクをとり何をするのか。何ができるのか。あるいはする意思があるのか。

 他国の紛争で自国民の犠牲は何としても避けたいことです。他方で、命の危険に晒され続けている私たちと同じ普通の人々を、他人事として、ただただ見過ごすのでしょうか。

 正解があるわけではありません。個々の国の、ひいては、私たち有権者一人ひとりの判断が問われます。

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